マーケティング

【要約&書評】『マーケティングの仕事と年収のリアル』 / 山口 義宏

〈この記事はこんな方におすすめ〉

・山口義宏さんの「マーケティングの仕事と年収のリアル」の感想や要約を知りたい
・マーケターとして年収を上げる方法を知りたい
・マーケターのキャリアパスについて具体的に知りたい

〈記事の要約〉

・マーケターとして年収1,000万円にしたいなら戦略的に環境を選ぶべき
・事業会社と支援会社では身に付けられる経験が大きく異なる
・自分に合ったキャリア構築のパターンを知り、そのために必要なものを身に付ける

山口義宏さんの『マーケティングの仕事と年収のリアル』を読んだのでその書評と要約をします。

年収1,000万円を超える人、超えない人の差とは?

年収1,000万円という高い報酬をもらう人は実際にどのくらいいるのでしょうか?「民間給与実態統計調査」によると、全所得者のうち個人年収1,000万円超の人は4.2%だそうです。山口さんによると、マーケティング業界における年収1,000万円という水準は、一部の大手広告代理店(グループ会社は除く)や外資グローバル企業の事業会社であれば早くて30歳前後で到達するそうです。同年代のマーケターの報酬の水準は500〜600万円くらいなので、それと比較すると倍くらいの差が生まれていますね。

では、なぜ差が生まれるのでしょうか?それはシンプルで、

  • 粗利額が違うから
  • 会社の戦略が違うから

のいずれかもしくは両方であると山口さんは推察されています。

<所感>
これは私も同感です。売上100万円を上げる人に100万円払っていたら会社は赤字になってしまうので、給与を上げるためには原資が必要ですよね。大手広告代理店や外資グローバル企業は扱う規模が大きいので粗利が確保しやすいということだと思います。ここでのポイントは、「希少性があることが年収を上げることに直結するとは限らない」ということかと思います。スキルが非常に高くても、どの環境に身を置くかで報酬という意味では制約を受ける可能性があるということですね。

個人的には、「得られる年収+得られる経験」をセットにしてこれを「報酬」と捉え、中長期的にキャリアを作っていくことが良いと思っているので、転職する時にはそれを基準に選んでいました。

事業会社とマーケティング支援会社との差は?

マーケターとして考えることのひとつに、事業会社と支援会社のどちらに行くか?というものがあります。事業会社 or 代理店(コンサル)のように捉えられることが多いですね。事業会社は自身のサービス(有形無形問わず)を成長させるためにマーケティングという立場で参画することを求められます。代理店(コンサル)は特定の専門領域においてクライアントに対して付加価値を提供することを求められます。

山口さんは、事業会社と支援会社で働くことの違いを下記のように説明されています。

事業会社で働くことの価値

主な価値:マーケティングの全体像が見渡せる

その他に得られる価値(経験)
  1. 比較的自由度の高い戦略策定ができる
  2. 特定業務だけでなく業務プロセス全体に関われる機会が多い
  3. (中小企業であれば)早くから大きな裁量と権限をもらえる
注意すべきこと
  1. 異動などが頻繁にあると広く浅くになってしまい専門性が身に付かない
  2. 裁量が大きい場合は主体性のない人にとってはかなり辛い
  3. 教育の体制が整っていない場合は自ら学ぶことをより求められる(中小企業に多い)

支援会社で働くことの価値

主な価値:特定領域の専門性が深まる

その他に得られる価値(経験)
  1. 特定領域の深いノウハウが得られる
  2. 業務が型化されていることが多いので、その型を学べる
  3. 組織マネジメントにも携わる機会が多い
注意すべきこと
  1. 代替性が高いため報酬水準は早い段階で頭打ちになる
  2. ブランド力がないところに長くいると転職で不利になりやすい
  3. マーケティングの全体像は見えづらい

<所感>
これもその通りだと思いました。私は支援会社も事業会社もどちらも経験しているのでそれぞれのメリット・デメリットがよくわかるのですが、大手なのか中小企業なのかという違いを特に意識した方が良いと思っています。裁量の大きさを重視するのか、それともブランド力がほしいのかなど。また、ブランド力がないところにいると転職で不利になるという点については確かに見え方としてはあるなと感じています。会社のスゴさと個人のスゴさは必ずしも比例しませんが、多くの企業にとってはパッと見の印象はやはり影響を与えるようです。ふろむださんの書籍『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』で書かれている「錯覚資産」というものですね。

私は中小企業の支援会社から東証一部上場の国内事業会社に転職しましたが、振り返ってみるとどちらも経験して良かったと思っています。若いうちに特定領域の専門性とマネジメント経験をある程度身に付けて事業会社に転職し、そこから業務プロセス改善などをおこないながら事業責任者になりましたが、ムダだと思ったことはひとつもありませんでした。むしろどちらかにどっぷり浸かることにキャリア構築の上でリスクを感じていたので、感じ方は人それぞれだと思います。

マーケティング職の6つの成長ステージ

マーケティング職には6つの成長段階があると山口さんは説明しています。

  • ステージ1:マーケティング業務の見習い
  • ステージ2:特定業務の担当者(ワーカー)
  • ステージ3:特定領域の専門家
  • ステージ4:マーケティング施策の統合者(ブランドマネジャー)
  • ステージ5:ブランド・マーケティング全体の責任者(CMO)
  • ステージ6:マーケティングに強い経営者(CEO)

ステージ1〜ステージ6になるにしたがって、下流〜上流へと業務内容が変わってきます。大きな仕事の進め方としては、ステージ1の時には仕事の仕方や考え方を覚え、そこからまずは専門性を身に付けていきステージ3くらいまでに明確な実績やスキルを身に付ける。そこから特定のブランドや事業のマーケティング全体に責任を持ち、その範囲が広がって複数のブランドのポートフォリオを管理し、それが経営全体に広がってステージ6という感じですね。ここで目指すべき水準や具体的な方法については書籍に書いてあるのでぜひ興味があればご覧いただければと思います。

<所感>
私が実際に仕事をしてきて感じたのは、つまずきやすいのがステージ3とステージ5だということです。ステージ3は自身の身に付けた専門性を使って明確な実績を出すことを求められます。これは「関わった案件や環境」の影響を大きく受けます。実力があったとしても「成果を出しやすい環境」かどうかというのは間違いなくあって、例えば予算が極端に少なくて施策もあまり試せないとなると実績を出すことが難しくなってしまいます。また、周囲の協力を得やすい方が何かとメリットは多いです。そういう意味ではある程度の規模の仕事を担当できるようにまずは社内での信頼を獲得することが大事だと考えています。そのような仕事に携われたとしても実際に成果を出せるかはまた別ですが、ここで求められるのは本質的な課題がどこにあるかを考えることだと思っていて、この「適切な課題設定ができること」に加えて「適切なコミュニケーションを取りながら実際に実行・推進できること」も入ってくるのでどちらかもしくは両方が欠けているとここで停滞してしまうんですよね。また、ステージ5に関しては多角的な視野が求められるので全社戦略を意識した上で資源を適切に配分する「ポートフォリオ管理能力」が特に求められると思います。自分のブランドや事業に愛着を持ち過ぎたりすると偏ってしまったりすると思うのでいかに「フラットに物事を捉えられるか」が重要だと考えています。前職の私の上司はその能力がかなり高く、一緒に仕事をしながら多くのことを学ばせていただきました。

キャリア構築の7つのパターン

マーケティングの仕事をしている人は、今後どのようにキャリアを構築すればより良いキャリアが手に入るのでしょうか?山口さんはその具体的な方法として、事業会社と支援会社、転職活用の有無によって下記7つのパターンに分類されています。

A:事業会社を軸としたキャリア構築

パターン1:自社を愛するコミット型

パターン2:王道キャリアアップ型

パターン3:ヒット実績で渡り歩くブランド人型

パターン1は1社で働き続けるモデル。パターン2と3は転職も活用するモデルです。

B:支援会社を軸としたキャリア構築

パターン4:中小ベンチャー早期抜擢型

パターン5:大手支援会社でじっくり昇進型

パターン6:真理探究の職人スペシャリスト型

パターン7:事業立ち上げ請負人型

パターン4と5が1社で働き続けるモデル、パターン6と7が転職も活用するモデルです。

わかりやすい名前なので、どのようなキャリア形成からは想像がつくと思いますが、詳細を知りたい方は書籍をご覧ください。とてもわかりやすく具体的なアドバイスが書かれていますのでおすすめです。

<所感>
マーケティングに限らずどの仕事でもそうですが、

  • (周りが転職するようになって)このままこの会社にい続けて良いのだろうか
  • スペシャリストが良いかマネジメントをしてジェネラリストを目指すべきか
  • 支援会社から事業会社へ行ってみたい

などの悩みは多くの方が持っていらっしゃるかと思います。そうした問いに対する結論は「置かれている環境や何を大事にするかは人によって違うので自分で考えて決めた方が納得感もあって良い」となるのですが、どのような方がどのパターンに向いているか、そのためにはどうすれば良いのかというのが書かれているので親切だと思いました。見ていただくとわかる通り、全く求められる資質が異なります。資質が求められるということは、自分と合うものを探す努力が必要だということです。ここを間違えると不幸ですし、不幸になった人を私は見てきました。選び方を間違えると、不本意に転職回数を増やすことにつながったり、メンタルをやられてしまったりもします。それはなぜ起こるのかというと「自分の価値観に合った選択をしていないから」ではないでしょうか。優先順位として

報酬 > 価値観

ではなく

報酬 < 価値観

で選ぶことで、「他人から良く見えるキャリア」ではなく、「自分にとって良いキャリア」が築けると私は考えています。そのためには良い考え方の型を知った上で、自分自身と向き合いそれに当てはめていく作業が必要になってきますが意外にもちゃんと向き合っている人は少ないので、キャリア相談を受けた際にはその人自身の核となるものが何かを一緒に見つけていくところから支援することが多いです。

【体験談】私のキャリアパス

私のキャリアパスはこの本に書かれている本のパターンにはぴったり当てはまらない気がしているのですが笑、下記のようなキャリアパスに結果的になりました。これは最後は決めていたものの、それ以外はその時のタイミングやライフイベントによって都度意思決定をしてきたためで、戦略的かどうかでいうとそうではないかもしれません…笑。

<私のキャリア(ざっくり)>

  1. 音楽制作の仕事(作曲や編曲)
  2. 完全未経験でSEM領域の中小支援会社でデジタルマーケティングのアシスタント
  3. 同社でコンサルタント→シニアコンサルタント→マネージャー
  4. 東証一部上場の大手事業会社に転職し、マーケティング担当
  5. 同社でマーケティングだけでなくコールセンターマネジメントや社内育成なども担当
  6. 同社で事業責任者になり事業戦略策定から営業、マーケティングなど何でも担当
  7. 独立

このように、大きくは「マーケティング」から「事業開発」へとキャリアが変わっていきました。マーケターであり事業家でもあるという方が適切かもしれません。元々好奇心が旺盛で自分が面白いと思ったものはやってみたいという性格だったのと、バランス型でかつ抽象的なことについて考えるのが好きだったので全体最適が比較的得意だったというのもあったと思います。キャリアを振り返ってみると、何も知らない自分を拾ってくれた最初の中小企業に入社できたことが自分のキャリアを動かした大きな転換点でした。楽しかったことも辛いこともありましたが、結果的には3年ほどでマネージャーにまで上がることができ、自身の業務だけではなく採用教育や組織マネジメントまで携わることができたのは大きかったと思います。次の事業会社へ転職する際にそれはプラスになったと感じますし、また転職後の仕事においてそれまでの経験は大いに役立ちました。私の場合はマーケティングを軸にしてその担当範囲をどんどん広げていき最後は起業するということになったのですが、起業は以前から決めていたことだったのでそれまでの過程はほぼ興味にしたがって選んできたようなものです。もちろん転職するに際しては、

  • 自身の大事にしている価値観と合っているか
  • 早期に事業責任者になれるチャンスがあるか
  • 成長する市場であるか

などの視点で選んでいたのでそういう意味では戦略的かもしれませんが、そもそも人生はどうなるかわからないというのが根底にあるので、適度に不確実性の中に身を委ねる方がチャンスにも気付きやすいと思っているところがあります…笑。セレンディピティを大事にしてるというかプランドハプンスタンス理論というのもありますし、あまり固定化しなくても目の前にあることに一生懸命取り組み実績を出すことで見えてくる世界があるので、その世界が見えた時に改めて考えるくらいでも良いのかなと思いました。山口さんも

キャリア構築は、3年をメドに臨機応変に見直す

ということを推奨されているので意図していることは同じかなと感じました。

報酬という意味では、大きく上げるという転職ではありませんでした。先に書いた通り、私は「得られる年収+得られる経験」をセットにしてこれを「報酬」と捉え、中長期的にキャリアを作っていくことが良いと思っているので、年収よりも早い段階で大きな裁量を与えてくれる環境を重視していました。裁量をもらって実績を出すことでその後の可能性も広がって、予想していなかったところへ行ける気がしたのです。年収が高いことと裁量の大きさは必ずしも比例しないと考えていたので、コモディティ化しないためにも、また自分自身がより楽しむためにもそのような基準で仕事を選んでいました。

こうして振り返ってみて、こうなることを予測していたかというと「予測していた部分はある」くらいが妥当です笑。これまで多くの失敗をしてきましたが、でもこれで良かったと思っています。仕事の中で出会った方たちに学ぶことは多く、また人として好きな方も多かったですし、いまの自分も肯定できます。別の生き方もあったのかもしれないですが、それを考えるよりはこれからどうするか、ひいては今どうするかの方がずっと重要だと思うのでこれからも自分自身を高めつつ、関わる方たちに恩返しの意味も含めて大きく価値貢献していきたいと思います。

まとめ

この本はタイトルこそ年収をいかにして上げるかというポジションで書かれている本に見えますが、実際は「自分にとって納得感のあるキャリアを構築する方法」という方が正しいように感じます。年収は少ないよりは高い方が何かと良いですが、それ以上に「自分が本当にやりたいことは何か」からキャリアを構築していく方がより幸せになれるのではないでしょうか?山口さんも下記のようにおっしゃっています。

大切なのは、自分のスキル特性を知って磨くだけでなく、価値観や気質のようなものを知り、それに適した環境に身をおくことです。

と。「自身のキャリアを考える」ということは「自分にとっての『幸せ』を考える」とほぼ同義だと思うので、しっかり向き合って良いキャリア、そして良い人生が続くと良いですよね。そのためのひとつのキッカケとして、本書は誠実なスタンスで書かれておりとても良い本なので興味を持たれた方はぜひ読んでみてください。

ABOUT ME
MASAYOSHI MURAYAMA
MASAYOSHI MURAYAMA
■プロフィール:「ユニークをスタンダードにする」がミッション。社会における人々の役割の最適化と居場所づくりを目指して、経験と実績にもとづいた【成果につながる】デジタルマーケティング教育とメンタリングを軸にしたキャリアデザインやコミュニティ運営をおこなっています。■略歴:大学卒業後IT企業でデジタルマーケターとしてのキャリアをスタートし、東証一部上場の大手クライアント(BtoB)の目標を12ヶ月連続で達成。その後株式会社エス・エム・エスにて新規事業(BtoC)のマーケティングを担当し1年で利益を2倍以上に増やし黒字化に貢献。その後同事業の責任者になると同時に別の新規事業(BtoC)の立ち上げもおこなう。2018年11月ユニスタ株式会社を創業。
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