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【要約&書評】<5分でわかる>「脳が認める勉強法」 / ベネディクト・キャリー

〈この記事はこんな方におすすめ〉

・ベネディクト・キャリーさんの「脳が認める勉強法」の感想や要約を知りたい
・記憶のシステムについて知りたい
・脳科学的に正しい勉強方法について知りたい

〈この記事によってわかること〉

・書籍の要約
・記憶に関する理論
・効率的な勉強法

ベネディクト・キャリーさんの「脳が認める勉強法」を読んだのでその書評と要約をします。

Contents

なぜ過去の体験は細部まで思い出せるのか?

意味記憶とエピソード記憶

記憶の中で、細部まで覚えているものと全く覚えていないものがありますよね?なぜ過去の体験は細部まで思い出せるのでしょうか?ベネディクト・キャリーさんによると、「その記憶には、オリジナルの体験のときと同じ感覚、同じストーリーが含まれているから」なのだそうです。記憶には2種類あり、電話番号を覚えるなどの「意味記憶」と、ストーリーや感覚など一連のものとして記憶する「エピソード記憶(自伝的記憶)」に分かれます。この場合は前者ですね。記憶といってもその中には種類があるということです。
また、記憶を形成する部位は決まっていて、その部位は記憶の種類によって異なることが研究によって明らかになっています。

記憶を使うことで記憶は変わる

脳に保存されたアイデアや経験は、コンピュータに保存される形では保存されないそうです。脳の場合、知覚、事実、思考のネットワークに組み込まれる形で保存されるため、思い出すたびに記憶が若干変わります。以前に思い出したものを上書きするわけではなく、それと重なり結び付くようです。

確かに、同じ記憶を思い出しても全く同じように思い出すことはあまりないように感じます。風景やセリフ、感覚などがその時の自身の状態などで多少変わりますし、捉え方が変わったりすると今までとは違う印象になったりします。それは記憶が変化したからなのですね。

忘れることで記憶が強化される「レミニセンス」

記憶すると言うととにかく忘れないように一生懸命覚えようとしがちですが、むしろ忘れた方が覚えられるとベネディクト・キャリーさんは指摘しています。人間には一度覚えたことを忘れる傾向がありますが、それと同時に一度忘れたことを思い出す傾向も備わっているのだそうです。イギリス人教師で研究者のフィリップ・ボスウッド・バラードさんはこれを「レミニセンス」と名付けています。レミニセンスは一種の成長を意味しており、覚えていると思っていなかった事実や言葉が浮かび上がってくる性質を示しています。

記憶には「保存」と「検索」の2つの力がある

脳に関する研究が進む中で記憶に関する仕組みが徐々に解明されていく中、「不使用の理論(覚えるために忘れる理論)」というものがビョーク夫妻によって発表されます。この理論の第一原則は、「どんな記憶にも、保存と検索という2つの力がある」というものです。脳は重要だと思ったものを記憶する傾向にありますが、ビョーク夫妻の理論によると、保存の力は増えることはあっても減ることはないそうです。これは死ぬまで保存されるという意味ではなく、検索すれば探し出せる状態にあるということを意味しています。重要なものは顕在化した記憶としてありますが、そうでないものは検索して引き出されることによって思い出すということですね。

検索という仕組みはWEBサービスなどでは当たり前におこなわれていますが、その概念の似ていますね。いまでいうところのハッシュタグのようなイメージです。

記憶力を高める方法

複数の知覚を関連付けることで記憶力は向上する

研究によると、勉強する際にBGMがあるのとないのとではBGMがあったときの方が記憶しやすいのだそうです。BGMに限らず、勉強する場所を変えるのでも良いのですが、いつもの環境に変化を加え、複数の知覚を関連付けることが重要とのこと。確かに、匂いや景色が異なるとそれ自体が異なるものとして認識されて記憶に残りやすくなりますね。復元するときの材料に特徴を持たせるというのがポイントだと思われます。学生時代によく聴いていた音楽をしばらく経ってから聴くと当日の思い出が鮮明に浮かんでくるのもこれと同じことですね。

分散学習は一夜漬けに勝る

テスト前日など、一夜漬けで勉強をされたことがある方は多いのではないでしょうか?これは脳科学的には良くないこととされており、分散学習の方が効果があると研究で示されています。特に新しいことを覚えるときに効果的だそうです。忘却曲線で有名なエビングハウスさんの研究では、無意味な音節を覚えるために、1日68回繰り返し練習し、その翌日にもう7回練習すれば、すらすら書けるようになったのが、覚える時間を3日に分散すると、たった38回の練習で書けるようになったそうです。「一度にまとめて練習するよりも分散して学習する方が明らかに効率が良い」とエビングハウスさんは書き残しています。

世界一の外国語習得方法とは?

ベネディクト・キャリーさんが考える最高の外国語習得方法が「ジャームズメソッド」と呼ばれるものです。これは端的に言うと、幼少期の発達に一流の指導を組み込むというものです。子どもは、新しい言語を理解し使わざるを得ない状況に追いやられるとその言語を素早く習得するのだそうです。これは帰国子女などの方の話を聞いたりしているのを考えても納得がいきます。また、大人の場合でも学習効果は子どもに比べて下がると思いますが強制的に話さないといけない場所に行くというのは効果がありそうですね。

記憶:暗唱 = 1:2

覚えるためには忘れることが、そして時間を空けて繰り返すことが大事だとわかりました。では、その最適な比率はどの程度なのでしょうか?この問いに対してコロンビア大学のアーサー・ゲイツは下記のように結論付けています。

「総じて言うと、最高の結果が得られるのは、およそ40パーセントの時間を覚える時間に使った後で暗唱の練習を始める場合だ。暗唱の練習をするのが早すぎても遅すぎても、暗唱の精度は低くなる。」

彼の実験では、年長の生徒になるとこの割合がさらに代わり、最終的には全体の約30パーセントを覚える時間に割り当てるのが良かったそうです。つまり、覚える時間と暗唱する時間の比率は1:2というのが黄金比率ということですね。適切な間隔で繰り返すことで学習の効率は向上するのが重要なポイントでしょう。わかっていてもなかなか続かないですが、いまはそれらを補助してくれるアプリなどもあります。私が使っているのはこちら。

reminDO:忘却曲線に基づいた記憶に残せるメモ/ブックマークサービス

先日書いた「アウトプット大全」にも同じようなことが書いてあります。

自己テストと事前テストをおこなう

さらに学習効果を上げてくれる方法があるとベネディクト・キャリーさんはおっしゃっています。それは「自己テスト」をおこなうことです。それと「事前テスト」がさらに効果的とのことです。ここでのテストは「検索の練習」というのが本来的な効果と考えるのが良いでしょう。事前テストというのは、これから学ぶ内容についてまず先にテストをすることです。この時にはできなくて当たり前なのですが、事前におこなうことで自分が何についてわかっていないか、何を検索する必要があるのかを認識することができ、実際に自分で学ぶ際により集中して取り組むことができるようになるようです。この方法は試したことはないですが、イメージしてみると確かに効果はありそうです。あまりにもできないと危機感をおぼえますし、ここができれば良いのかという風に認識できるので、今後の学習に取り入れていきたいですね。

解決力を高める

問題解決の4つのプロセス

問題解決にあたるとき、そこには4つのプロセスが存在するといいます。

  1. 準備
  2. 孵化
  3. ひらめき
  4. 検証

です。問題に対して向き合って考えているのが第一段階である準備、そこで問題が解けなかった時、一時的に脇に置くことがよくありますがこの間にも脳の中では問題解決のためにあれこれと動いているようです(我々は自覚していませんが)。つまり脳は休息中も問題と向き合い続けているのです。この期間が第二段階である孵化です。そして問題を忘れた頃に突然解決方法を思いついたりしますよね。これが第三段階のひらめき。最後に、そのひらめきが本当に問題を解決するものであるかを確認する検証というプロセスで一連の問題解決はおこなわれるということです。

人は何かを割り当てられると完了させたくなる

ツァイガルニク効果というものがあります。「達成できなかったり中断していることの方が、達成できたことよりもよく覚えている現象」のことですが、完成されていないものに惹かれるという風にも考えられます。NLPに関する何かの本で「脳は空白を嫌う」という表現を見たことがありますが、スキマを埋めたいという性質が脳にはあるようです。

これを学習に応用しようとするとどうなるでしょうか?ベネディクト・キャリーさんによる答えはこうです。

  1. まず何かをやると決める(目標設定)
  2. その上で行動を起こす
  3. 途中で意図的に邪魔(インターリーブ)を入れる
  4. 完了していない方が気になるようになりやり遂げる

ここで「インターリーブ」という概念が出てきましたが、「関連性はあるが取り組んでいるものとは違う何か」という意味です。音楽の勉強で考えてみると、理論の勉強をしているときに、演奏の練習を入れるなどですね。このインターリーブにより、学習している項目やスキル、概念の違いなどがわかるようになるだけでなく、個々の特徴をより鮮明につかめるようになるそうです。

まとめ

脳科学的に効果があるという学習方法は、直感的にわかるものである一方、従来の価値観で良しとされてきたものとは異なる結論になるものもあります。一番大事なことは、既成概念をいったん取り払ってインプットし直すことなのだなと感じました。また、学校の教育システムはよく練られたものであるということも改めて思いました。

学習の必要性は感じているけど長続きしない、時間が足りないという方には効率良くおこなえる方法が研究結果と共に記載されているので特におすすめです。

ABOUT ME
MASAYOSHI MURAYAMA
■プロフィール:「ユニークをスタンダードにする」がミッション。社会における人々の役割の最適化と居場所づくりを目指して、経験と実績にもとづいた【成果につながる】デジタルマーケティング教育とメンタリングを軸にしたキャリアデザインやコミュニティ運営をおこなっています。■略歴:大学卒業後IT企業でデジタルマーケターとしてのキャリアをスタートし、東証一部上場の大手クライアント(BtoB)の目標を12ヶ月連続で達成。その後株式会社エス・エム・エスにて新規事業(BtoC)のマーケティングを担当し1年で利益を2倍以上に増やし黒字化に貢献。その後同事業の責任者になると同時に別の新規事業(BtoC)の立ち上げもおこなう。2018年11月ユニスタ株式会社を創業。
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